そもそも、子どもたちに財産を遺さないといけないんでしょうか
【質問】
終活の書籍を読んでいると、子どもたちに財産を遺すことがいいことだという前提で、節税とか遺言書とかの話をされているように思います。私は、自分の人生なのだから自分で全部使い切ってからあの世に行きたい思います。遺言書など書きたくないし、相続税も払わずに子どもたちの争いにもならないためには、財産を遺さないのが一番いいのではないでしょう。間違った考え方でしょうか。
【回答】
全く間違っていないと思います。
①自分の死期がわかっていて、
②貴方の財産がすべて流動資産で
③お子さん達が財産が遺されないことを知っている
のであれば、それは可能だと思います。
①財産を遺さずに死ぬというのは実際のところなかなか難しいところです。なぜなら自分がいつ死ぬかは通常わからないからです。死期がわかっているのであれば、来たるべきその日のために計画的に財産を減らしていくことは可能でしょう。なお、財産がマイナスになった場合、つまり負債がある場合、それも相続されますので、相続財産をちょうどゼロにするというのはやはり現実的ではなさそうです。
②貴方がもし固定資産、代表的には不動産ですが、をお持ちであればこれを誰かに相続させないというのは困難です。なぜなら、お金は使ったらなくなるのに対して、不動産は使ってもなくならないからです。価値は減少するかもしれませんが存在はなくならないので誰かが受け継がざるを得なくなります。ですので、財産を遺さないためには固定資産はすべて流動資産に転化させましょう。そして、毎月の賃料を払って賃貸住宅での生活をしましょう。
③お子さんたちが、ある程度遺産をもらえることを当てにした生活をすると、いざ遺産がないとなったときに困ってしまうおそれがありますので、遺産を遺さない意向であれば、それはそれで予め子どもたちに伝えておく方がいいと思います。
いずれにせよ、子どもたちに多くを遺さない方がいいというのは十分にありえる考え方だと思います。自分が亡くなったときにどれくらい遺産があるかであなたの人生の価値が決まるわけではありません。自分のお金を自分のために使うのもそれはそれで自由ですね。本当に子どもたちのことを考えたら、生きている間に子どもたちの教育のために惜しみなく投資する方が良いお金の使い方とも言えそうです。その辺りは、その人それぞれの人生観や価値観であり、特定の正解はないように思います。
(弁護士堤悦朗)