相続で家庭裁判所が関わるのはどんなときですか?
【質問】
終活の勉強をしていると、遺言書が出てきたら裁判所に持っていきましょうとか、相続を放棄したいときは裁判所に行きましょうとか、揉めたら裁判しましょうとかよく聞くんですが、五月雨式で聞くのでうまく整理できていません。結局どんなときに裁判所が関わるのか網羅的に教えて下さい。
【回答】
まず、相続に関して裁判所が関わる場合、ほとんどの場合それは家庭裁判所を指します。略称は家裁〈カサイ〉です。
家裁が関わる場面は、大きく「訴訟」と「審判」と「調停」があります。とても大雑把に言うと、審判と訴訟は、家裁が強制的に判断する・決めるものです。調停は、家裁が中心となって当事者の話し合いをまとめるものです。以下具体的に見てみましょう。一般の方は覚える必要は全くありません。
【1 訴訟手続】
- 遺言無効確認訴訟
- 遺産確認訴訟
- 相続人の地位不存在確認訴訟
- 不当利得返還請求訴訟
【2 審判手続】全部で9つあります。①を利用する人が最も多いと思います。⑥や⑦も割といらっしゃいます。
- 相続放棄申述
- 限定承認の申述
- 承認または放棄の期間伸長
- 相続財産管理人の選任
- 特別縁故者に対する相続財産分与
- 遺言書の検認
- 遺言執行者の選任
- 遺留分放棄の許可
- 遺留分の算定に係る合意の許可
【3 調停手続】全部で5つあります。①が最も大事ですし数も多いと思います。また、④で争いになることが割と多いと感じます。
- 遺産分割
- 寄与分を定める処分
- 特別の寄与に関する処分
- 遺留分侵害額請求(*令和元年7月1日より前に開始した相続については遺留分減殺請求)
- 遺産に関する紛争調整
なお、調停手続きで話し合いがまとまらない場合は、審判手続きに移行します。ただ、④の遺留分侵害額請求については裁判(=訴訟)で決着を図ることになり、管轄が家庭裁判所ではなく地方裁判所になりますので注意しましょう。
取り急ぎ網羅的にご紹介しました。
詳しくは後日それぞれ掘り下げていきますね。
(弁護士堤悦朗)